これは僕が大学2年生の時の話です。
10月31日、ハロウィンの日でした。
その日は所属していた学友会バレーボール部の大会に参加するために僕を含めて複数人で車で大会会場に向かいました。
僕はその日、大学の公式戦に初めて出ることになりました。それも1セット丸々出場していたのでかなり長い時間コートに立っていることになりました。
試合が終わると、僕たちバレー部は同じ車に乗っている人たちと一緒にご飯を食べに行くという慣習があります。それに従って僕たちはその日、焼き肉を食べに行くことにしました。焼き肉は一人暮らしでは中々食べる機会がないため、とてもおいしく感じました。
食事を終え、車から降りると僕は自宅に帰ることにしました。その日は試合に出たため、自宅に着くと一気に眠気が襲い、ベッドであっという間に寝てしまいました。
それから約1時間くらいが経過しました。僕はふと目を覚まし、その場でぼぅっとしていました。すると、携帯が突如なり始めました。
何事かと携帯を手に取ると、そこにはバレー部の先輩の名前が表示されていました。
僕は冷や汗をかきました。先輩から突然電話を掛けられるというのは明らかに異常事態であり、僕はきっと何か良からぬことをやらかしてしまったのかもしれない、と考えたのです。
恐る恐る携帯を手に取り、電話に出ると、その声は予想を裏切るものでした。
「○○(僕の名前)さん、突然すみません。今から××(車を停めた場所)に向かってもらうことはできますか?」
電話で出てきた声は女性のものでした。どうやら電話をしてきたのは1年後輩の女子マネージャーだったのです。おそらく、先輩が携帯を貸した状態でその場にいた後輩の女子マネージャーに電話に出てもらったのでしょう。
続けて女子マネージャー(Aさん)はこう言いました。
「Oさん(同期の女子マネージャー)が酔いつぶれて泣き止まなくなっちゃって、同期の人が来てくれないと帰りたくないって言いだしちゃって、、、、こちらに来てくれませんか?」
あまりの状況の異質さに最初は戸惑いました。そして同時に、「行きたくねぇ、、」と思います。
自宅から車を停めた場所までかなりの距離がありますし、何より酔いつぶれた O を介抱しなければいけないのが非常にめんどくさかったからです。
O は大学1年の12月に入部しており、他の同期のプレーヤーと比べても非常に遅い時期に加入しています。僕ら同期のプレーヤーは何とかして彼女と仲良くしようと接しますが、どうも冷たい態度しかとらないのです。僕は偶然にもその O と同じマンションに住んであり、そのことが判明した日の帰りにも、絶対に一緒に帰ろうとはせず、一目散に帰宅していたぐらいです。
しかも O はたちが悪いことに、仲良くしたい人間を選り好みする傾向があるのです。自分のお気に入りの男にはベタベタと接し(この時の目は女の目をしている)、その他大勢の人間はまるで虫を見るかのような扱いなのです。
どうやら O の話によると、中高とずっと男友達しかいなく、同性の友達からは嫌われていたようです。
男だろうと女だろうと、同性の友達がいない人間というのは得てしてろくでもない奴なのです。
こんな感じの人間が酔いつぶれて、その介抱の手伝いをしなければいけないのですから、非常にめんどくさく感じていたのです。
しかし断るわけにはいかなかったのです。
助けを求めに来た Aさんは、なんとその日に入部を決めてくれており、そんなめでたい日にこんな地獄絵図を見せられてしまってはたまったものではないだろうからです。
仕方なく僕は、「わかった。30分くらいかかるから、それくらい待っていてくれ。」とだけ言い残し、大急ぎで問題の場所へ向かうのでした。
問題の場所に来ましたが、どこを探しても O はいないのです。「どこにいるんだよ、あの野郎。」と半分キレた状態になっていましたが、LINEで先輩から場所を教えてもらってなんとかたどり着くことができます。
先輩は、道路の縁石に座って泣いたままの O を慰め続けていたでした。
「うわ、、、、終わった、、、、、」
こんな状態の O を片道数kmある自宅まで歩いて介抱しなきゃいけないのか、、、、と思いながらも、先輩の頼みを断ることもできず、仕方なく介抱の手伝いをするのでした。
(後半に続く)
コメント